2008年01月28日

グミ・チョコレート・パイン

 ということで、あんなことこんなことがありましたが、テアトル新宿での上映から1ヶ月ほど遅れ、aliasの住む地方でも無事公開されました。

で、映画館の上映時間を調べていると…


☆初日ご来場の先着60名様に“しるこドリンク”をプレゼント!
(提供:サンガリア「ふるさとの粒しるこ」)



と書いてありました。そんなものをもらっても迷惑なのにな〜と思っていたのですが、
残念ながら入場口で否応無く、おしるこを手渡されてしまったaliasなのでした。






 物語は、2007年に会社をリストラされ、東京郊外の実家に戻ってきた大橋賢三は、
一年前に届いた山口美甘子からの手紙を見つけた。高校時代の彼の憧れだった彼女は
一年ほど前に自殺してしまったことも友人から知らされる。そして一枚の便箋にはたった
一行「あなたのせいなのだから。」と書いてある。

21年前の1986年、高校2年生だった彼は、流行を追いかけくだらない話で盛り上がっている同級生たちをバカにしていた。数多くのマイナー映画まで網羅していることを誇る彼だったが、クラスメイトの女の子に話しかけることも話しかけられることもない存在でしかなかった。しかし、普通の高校生が行くはずも無いようなカルト映画の劇場で山口美甘子を見つけ、間違って買ってしまったおしるこがきっかけで映画談義をするようになり始めた。普段、彼は数少ない友人のカワボンとタクオで夜通しアンダーグラウンドなロックを聴き互いに語り明かしていただけだったが、バカな同級生たちと自分たちが違うことを証明するために“キャプテン・マンテル・ノーリターン”というノイズバンドを結成した。しかし、全くの素人でギターを買う金さえない上に、担当だった作詞がうまくできずに焦りを感じてしまった彼は、プレッシャーから逃げ出すように妄想の中に山口美甘子を作り上げ、煩悩に振り回されしまい現実から逃避していく。そして…



 この作品はロックミュージシャンでもある大槻ケンヂさんの半自伝的物語が原作だというのに、上映中に4曲ぐらいしか流れないほど地味に展開するのです。そして、派手なオープニングの曲もなく「ビーバップ・ハイスクールみたいなケンカもなければ、ウォーターボーイズみたいに泳いだりもしない」という文科系の普通の少年の物語であることを、前面に押し出した地味なナレーションで始まる物語なのです。

映画の地味さをアピールしていたり、ストーリーも暗い印象を受けてしまうのですが、国生さゆりさんの“バレンタイン・キス”という曲を聴きながら、いきなり主人公役の石田卓也さんが自慰行為をはじめたり、その状態を母親に覗かれるシチュエーションなどを作り出すので、リビドーの塊である高校生の強い性衝動とオナニーへのこだわりで、劇場から笑いや苦笑がもれるのです。他にも、本人は真面目なのに別の視点から見るとこっけいに見えてしまう状況を作り出す演出なのです。

そういえば、黒川芽以さんが“聖子ちゃんカット”というもので出演していました。この髪形だけに限っては、本当に流行ってたのか?と思うほど不自然な髪型でしたが、80年代を再現したアイテムや風景、閉塞した時代描写などが物語にリアリティーを与えていました。

さらに、ガメラの怪獣と同じ名前のジャイガー(犬山イヌコさん)やバイラス(山西惇さん)などの破綻した論理を振りかざすノイズバンドの人達など、言葉の通じない癖のあるキャラクターたちにやり込められ流されてしまう気弱な文科系の高校生たちの姿を見ていると、微笑ましいものを感じてしまいました。映画を観る心理状態によって多少は変わると思いますが、人を嫌な気分にさせるものを画きながら、同時に笑いを引き出すカットに、この監督の演出・脚本のすごさを感じました。


 なのですが、そんな癖のある脇役の人達にストーリーのベクトルを狂わされ、作品の主題が見えにくくなっていたり、物語の展開に整合性がないように感じてしまうのです。そして、大槻ケンヂさんへのリスペクトとして3冊分の原作の要素を多く取り込んだだけでなく、映画脚本としての書き足した要素もあるので、127分の映画に無理やり詰め込んだ印象を受けてしまうのです。

さらに、伏線や笑いなど、少しでも気を抜くと見逃してしまうほどスピーディーだったりするので、監督の世界観に少し戸惑いを感じました。

でも、最近のハリウッド映画や日本のドラマではスロー再生やクロスカッティングを多用し、重要なシーンや監督が魅せたいCGを強調する傾向にあります。さらに、観客の感情をコントロールするために「ここで泣いてください」と言わんばかりに壮大な悲しい曲を何度も流すなど、ドラマチックな演出を重視した分かりやすい作品を数多く見受けます。

で、この作品では重要なシーンや伏線などもそれほど多く強調しないのです。本来、日常の生活では彼氏と別れ泣き出しても雨が降り出したり音楽は流れないし、危機一髪の状況に陥ってもスロー再生にはならないように、この映画は現実の世界のようにリアルでスピーディーに展開するのです。でありながら、おしるこというアイテムだけで笑わせたり、和やかな雰囲気がいきなり凍りついたり、人と対峙する緊張感、少年たちの焦燥感などの感情面を見事に画面に映し出すのです。脚本・監督のケラリーノ・サンドロヴィッチさんが舞台で培った演出方法なのかもしれませんが、原作を見事に再現したシーンも含め、もう一度見てみたいと思うような映画なのでした。


 ということで、おしるこはこの映画にとって重要なアイテムなのですが、劇場で渡された缶と画面に映し出される缶とは別の商品だったことが一番気になったaliasなのでした
(おいおい)。


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