2007年10月21日

ダーウィンの悪夢

 2007年初頭は、この映画だけでなく地球温暖化をテーマにした“不都合な真実”などのドキュメント的な話題作が多かったので、今年はドキュメント映画ブームになるかも?と思っていたaliasなのでした。


 この映画はケニア、ウガンダ、タンザニアに囲まれたアフリカ最大の湖であるヴィクトリア湖にまつわる話なのです。世界第三位の面積を持つ湖には100万年もの歴史があり、この湖固有の種が進化し生息していることでも有名なのです。そのため、進化論のガラパゴス諸島に準え、ダーウィンの箱庭と呼ばれるほど希少な湖なのです。

この湖に棲む2mを超える肉食の大型淡水魚である“ナイルパーチ”という魚が、EUや日本に輸出されほど価値がある魚なので、現在では地元産業となっているのですが、この淡水魚が半世紀ほど前に放流された外来種であり、本来生息していた希少な生物たちを激減させ、数百もの種を駆逐し、絶滅させているところから物語は始まるのです。

日本の琵琶湖でも、外来種であるブルーギルやブラックバスが固有種の魚たちを駆逐し、生態系が変わってしまうと報道され問題になりました(これだけが生態系を変えた訳ではないんですけどね…)。その対応策として滋賀県は外来魚を駆除するために、釣り愛好家たちが行っているキャッチ・アンド・リリース(釣り上げた魚を再放流することを指すのです)を禁止にする条例を定めたため、滋賀県側と釣り人たちの原告団とで裁判になるほど揉めたことがあるのです。

で、ビクトリア湖でも外来種による同様の被害が起こっているのですが、日給が1ドルの仕事でも働く現地の人々にとっては、地元産業というより死活問題にかかわる生活手段となっているのです。


 物語は、魚を捕まえる猟師たち、加工し出荷する人たち、それを海外へ空輸するパイロットたちなど普通に工場で働く人々もいれば、金になる話を聞きつけた近隣の住民たちがこの町に訪れ魚群キャンプを作る。だが、彼らには船ひとつないので簡単に漁師としての仕事にありつける訳でもなく、工場でもなかなか雇ってもらえない。さらに加工後に残ってしまった腐った魚のあらで商売をする人たちもいる。貧富の差が広がっていくこの町には病気や怪我をしても診療所すらなく、彼らを相手に商売をする売春婦たちも増えはじめエイズの蔓延を止める手段すらない。やがて、生活できなくなった親たちから捨てられたストリートチルドレンたちが増えていくが、子供たちは空腹と暴力に怯える毎日を送り、その恐怖を紛らわすために簡単に手に入る粗悪なドラックで蝕まれていく。そして…。


 この作品は悲惨な現実をインタビュー形式で映し出すのですが、観ていて痛々しくなるようなエピソードばかりなのです。湖の中で外来種が固有種を捕食していくように、人間同士により地上で行われている弱肉強食という優劣の結果が映像により見せつけられます。さらに、輸出する魚を海外に運び、帰り道は空のはずの飛行機には武器を密輸しているのではないか?ということまでが暴かれるのです。日本と同じような問題が起因となっているのですが、あまりにかけ離れた状態になっている現実に驚かされるのです。

なのですが、この映画は現地の問題を調べ上げ制作された作品には思えず、突撃取材のような印象を受けてしまう映画なのです。簡単に言うと、アフリカの大地はひどい状態だからとりあえず現場に向かい、場当たり的に悲惨な現場を回り衝撃的な映像を取っただけのような、見世物的なワイドショー風の撮影に思えてしまうのです。そのため、映画の中では闇の商売で金儲けをしている危険な地帯まで取材せずに、安全なところから取材をしているだけにも見えてしまうのです。

さらに、そんな方向性のない映画を収束させるために、一人の男がアフリカの現状を話すのですが、意図的にしゃべらせたとしか思えないようなイデオロギー的なことまで話すため、真実味が薄れてしまう面もありました(マスコミ不信とおなじような状況なのです)。


 ということで、日本でも話題になった“不都合な真実”にはイデオロギーや感情的見解が多く、さらに科学的に重大な誤りがあるということが言われたのと同様に、この映画の中にも不自然な点が見受けられたため、ワイドショーで映し出される芸能人の離婚話のように頭から通り過ぎてしまい、この現実を重く受け止められなかったaliasなのでした。



ダーウィンの悪夢 デラックス版
ダーウィンの悪夢 デラックス版


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/61670791

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。