2007年05月06日

バベル

 遥か遠い昔、言葉は一つだった。人間たちは神に近づこうと、天まで届く塔を建てようとした。怒った神は言葉を乱し、世界はバラバラになった。


 この映画は、旧約聖書に記されたバベルの塔をテーマに構築しているのですが、日本人としては、砂の嵐に隠されたバビルの塔に住んでいる超能力少年である“バビル2世”で有名な都市なのです(例えが古いって!)。



バビル2世 (8)



 テレビのCMや予告編で上記の内容や「その結末に、世界が息を呑む」と大々的に宣伝していたのですが、モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本、それぞれ違った言語を持つ4ヶ国のストーリーがオムニバス形式で画かれます。そのため、ブラット・ピットさんや役所広司さんらがキャスティングされていましたが、共演しているわけではなく、同じ作品に出演していたという状態になっていました。

で、日本ですら無名だった菊池凛子さんは、当然のようにアメリカの予告編では彼女の名前は表示されていませんでしたが、日本では、彼女が第79回アカデミーの助演女優賞にノミネートされたということで、連日、ワイドショーなどを賑わし、りんこ!リンコ!凛子!!!と何度も連呼されていました。でも、2月の発表以後は、祭りの後のように全く話題に上らなくなりましたね〜。

なので、この映画はゴールデン・ウィーク公開だったのですが、話題になってからかなり時間が経過していたので、まだ公開されてなかったんだ〜!という印象だったaliasなのでした。


 物語は、モロッコで放牧をしている兄弟が父親に与えられた銃で試し撃ちをするところから始まる。

離婚の危機に瀕した夫婦は子供たちを預け二人だけでモロッコに来ていたが、バスの中で妻が銃撃を受けてしまい瀕死の重傷を負う。山間部の辺鄙な場所だったため携帯も通じず、近くの街に妻を下ろし救急車を呼び、大使館へと救助要請をするが、地域の事情と政治的な要因があり、いつまで経っても助けは来なかった。

一方、明日に控えた息子の結婚式を楽しみにしていた、アメリカに不法滞在をしているベビーシッターの女性は予定通り帰ってこない親に対して困り、他に預け先のない子供たちを式の行われるメキシコへと連れて行く。

その頃、日本の女子高生のチエコは話すことが出来ないという障害のため、世間と接する機会が極端に減ることに悩み、孤独を感じていた。

これらの物語が、やがてひとつの物語へとつながる。そして…。


 映画を見る前は、菊池凛子さんが脱いでいることしか情報で入ってこなかったのです(おいおい)。でも、日本のパートは今回の物語では主題となるストーリーとは関わりの薄いエピソードなのですが、この作品を象徴する重要なパートになるのです。

性の堕落した女子高生として画かれていたため、日本を侮辱した設定になっているということで、日本では評判の悪い役どころだったようですが、ナンパをしてきた男性が、相手が聾唖者と分かった途端に手の平を返すように逃げていく姿など、切なくなってしまうほどの少女の描写を画くのです。

さらに、思春期の女性が普通の恋愛を出来ない辛さ、異端のものとされて好奇の目にさらされる姿、それゆえに自暴自棄になったり、自分を気にかけてくれる人のためにすべて投げ出してしまう悲しみなど、切ない少女の苦しみを表現していました。


 そして、全体の物語は時間軸をずらしながら、言語の違いで起こる問題だけでなく、文化における摩擦や人種差別、男女格差、核家族化、政治状況、宗教など、世界中の人がばらばらになってしまっている事をバベルに例えるのです。そして、人に伝えたいが伝えられない思いやもどかしさにより、別の選択肢を選らんでしまい、おろかな言動をしてしまう人の業までも画きだすのです。


 そんな深いテーマまで画かれ、一つひとつのストーリーには説得力があるのですが、全体としては、まとまりが無い様な印象を受けてしまうのです。

オムニバス作品としては、物語のつながり方や複数のストーリーを一つにまとめ上げる説得力などが魅力なのですが、連鎖する悲しみなどが共通して画かれているものの、ひとつの物語としては構成自体がバベルになってしまっていて、ちぐはぐな映画の印象を受けてしまうのです。そして、あまりに中途半端なエンドロールを迎えるこの物語は、観客に問題を押し付けるような作品となっていました(監督はドキュメント作品のように、この悲しむべき状況を観客に提示したかったのでしょうか?)。


 物語の奥深さやタブーとされるようなテーマまで画く展開など、見所の多い作品だったのですが、「その結末に、世界が息を呑む」と大々的に宣伝した映画会社の広報戦略に、別の意味で息を呑んでしまったaliasなのでした(意味不明)。



バベル スタンダードエディション
バベル スタンダードエディション
-------------------------------追記----------------------------------------------



 そういえば、この映画を“ミッドランドスクエアシネマ”という名古屋の劇場で鑑賞した観客、4月28日に5名、29日に1名が体調不良を訴えたことが4月30日に報道されました。


 問題とされている映像は開始から約80分後に映し出される、高校生役の菊池凛子さんがクラブで踊るシーンなのです。光の明滅を繰り返すシーンと、耳が不自由な彼女の内面を表現するために、激しい音楽と無音の状態を繰り返すのです。

現在は画面から目をそらせる事など、予めチラシや公式HPなどで鑑賞者に警告しているそうです。


 このニュースはテレビやワイドショーなどで大きく取り上げられていました。映画を見ていると気分が悪くなったと、インタビューに答えている人も報道されていました。

前に、1997年12月16日にテレビ東京系列で放送されたテレビアニメ“ポケットモンスター”では、激しいストロボフラッシュ的な明滅が繰り返されたため、テレビ局側が把握している人数だけでも、光過敏性発作とされる児童が全国で750名にも及び治療を受けたそうです(子供向けアニメなのです)。

この“ポケモンショック”とかポケモン問題、ポケモン騒動などと呼ばれる前例の事件があったので、大きく扱われたのかもしれませんね(アニメ放送などで「テレビを見るときは、部屋を明るくして離れて見てね!」という文言は、この事件以後にテロップで流れるようになったそうです)。


 aliasがこの作品を観たときは、違和感のあるシーンであったものの特に問題はありませんでした。

でも、世間的に注目の高い作品ということで、普段は劇場に行かない人が大画面の映像に酔う事は、たまに見かける光景なのです(刺激の多いアクション映画などでは、確率が高くなるのです)。

それに、バスで遠足に行ったときに、隣の子が車酔いをして青い顔をしながらビニールを用意しているのを見ると、こちら側まで顔が青ざめてしまうという連鎖的なものの可能性もあるのです。

予め、気分が悪くなると言われると、本当に気分が悪くなるという、病は気から的な現象のような気もするのですが、この件に関しては検証はされていませんし、海外ではこのようなケースは報道されていないので、現在のところ詳細は不明なのです。


 この報道に関しては、当日、劇場内にマスコミ関係の記者が居合わせたという話もありますので、大きく報道され過ぎているような気もしているaliasなのでした。

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