そのインディアンモーターサイクルとは、アメリカのマサチューセッツ州スプリングフィールドで1901年に設立された会社で、1953年に経営不振に陥り生産中止になってしまったのですが、ハーレーダビットソンと共にアメリカのバイク業界の一時代を担った会社だったそうです。
で、この映画は実話を元にした1960年代を画いた作品なのですが、公式サイトに、バート・マンロー、63歳。伝説のバイク“インディアン”とともに、世界最速〜時速300キロの世界に挑む!と書いてあったので、最初からすべてがネタバレな作品なのでした(おいおい)。
物語は、21歳のときに出会った“インディアン・スカウト”というバイクで世界最速になることを夢にみたニュージーランドに住む男がいた。40年以上のかけて独力で改造し続けた結果、ガラクタばかり廃材置き場のような家に住むバート・マンローは近所から迷惑がられ、すでに初老になってしまい年金生活を送っていた。体力の限界を感じていた彼は63歳の誕生日を機に、地球の裏側にあるアメリカのユタ州ポンネヴィルにあるソルトフラッツへ向かう、ドラッグレースでバイクの世界最速レコードに挑戦するために。近所の誰もが彼の勝利を信じていなかったが、いつも彼のことを見守っていた少年だけは優勝できることを信じてくれていた。そして銀行から借金をしてまで旅立った彼は、渡航費用を節約するために船員を勤めながらアメリカまでの船旅を過ごし、ロサンゼルスからユタ州までのバイクの輸送手段の現地調達など彼の貧乏旅行にはさまざまな壁があったが、旅先で出会う人々に助けられたり、やさしさに触れながら目的地となるレース場へと向かう。そして…。
この作品のラストでは300km/h超えられるのか?というのが大事なポイントになるのですが、正確に記するとアメリカを舞台に繰り広げられるため単位がマイル(mps)になってしまうのです。
物語では190mpsまでは簡単に速度が上げることができるが、200mpsになるまでの彼の努力と思いが涙を誘うことになるのです。でも、1マイル=1.60kmなので、キロ換算にしてしまうと320km/hに到達できるのか?という話になってしまい、記録を破る意味合いが薄れる一面があったので、人間の感動も住む国の単位に縛られていんるんだな〜と少し悲しい気持ちになりました。
なのですが、この映画はレースだけの物語ではないのです。アンソニー・ホプキンスさんが演じる63歳のバートが、昼夜を問わずバイクの改造をしていたり、お金がないため部品の一つひとつを手造りで鋳造するところなど、老人が少年のように夢に向かって突き進むところが素敵なのです。
どこから見ても田舎者な雰囲気を持つ彼は、おおらかで、握手ひとつで人を信頼させ、どんな問題でも解決するのです。そして困ったときに素直に人の助けを求めたり、老人になっても夢について語ったり、女性まで口説くというところが魅力的なのです。アンソニー・ホプキンスさんがかつて演じた“ハンニバル”のレクター博士とは対極にいるような人物設定なのですが、彼でなければ物語の説得力が無くなってしまい、すべては台無しになっていただろうな〜と思うほどの演技でした。
通常、競技用の車体はエンジンの設計から空気力学など、それぞれのエキスパートや多額の資金を投入して作り上げるのが現代のモータースポーツ界では常識なのですが、この作品では肉切り包丁でタイヤを削り高速用に改造したり、部品を手造りで鋳造したり、空気抵抗などを体感で処理するというアナログな展開なのです。
古き良き時代のことだからこんなエピソードが成立するんだな〜と思っていたのですが、1967年にバート・マンローさんが1000ccのクラスで樹立した最速記録は未だに打ち破られていないのです。
その事実を聞いて、バイク乗りとしてあらためてこの映画に感動をしてしまったaliasなのでした。
世界最速のインディアン スタンダード・エディション
