京極夏彦さんの作品は“嗤う伊右衛門”や“巷説百物語”などさまざまな作品が映像化されましたが、ついに一番人気の高く、デビュー作でもある京極堂シリーズが映画化なのです。
彼の作品を読んだことの無い方は妖怪小説や妖怪研究家として、“リング”などのホラー小説と同じ分類と思っている人が多いのですが、彼の取り扱う妖怪とは、昔は説明のできない現象を架空の生き物である妖怪の仕業として記号化していたので、妖怪には人間の歴史や謎が隠されていると言うスタンスで、さらに人の心の闇を妖怪とたとえ、その憑き物落としすることによって「この世には、不思議なことなど何もないのだよ、関口君」と言い放ち、事件を解決するという理にかなった本格ミステリー小説なのです。
で、小説自体が600ページを超える弁当箱のような本なのに、原作を忠実に再現しようとしたため、主人公役の堤真一さんがずっと台本を読み上げているような、ラジオドラマみたいな映像になってしまいました。本来小説では、さまざまな文献などを通して、妖怪というものにおどろおどろしさやリアリティーをだし、それを理で解き明かされるところが醍醐味なのですが、2時間ほどの映画では妖怪にリアリティーや重厚さを出せなかったために、ストーリー全体を見るとえらい薄っぺらいオチの物語だな!という印象も受けてしまいました。
田辺誠一さんがドラマ主演した巷説百物語は短編の作品だったので世界観をうまく表現できていたのですが、長編作品であるこの作品は映画という媒体には向かなかったようです。昭和20年代の戦後の混乱がまだ残っていた頃を時代背景にして、全体的に異世界に呼び込まれたような不思議な映像空間を作り出しているのですが、上映時間の半分を問題提起に使い、残り半分を謎解きに使われたら、ちょっと飽きてしまいました。
次回作品を作るとしたら、コナン君や土曜ワイド劇場のように時間配分をうまく考えて欲しいです
(次回作はあるのか?)。
姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション
